生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)

傷寒論・金匱要略条文

【太陽病下篇】
傷寒、汗出でて解するの後、胃中和せず、心下痞鞭、乾噫食臭、脇下水気あり、腹中雷鳴、下痢する者は、生姜瀉心湯之を主る。

傷寒が発汗剤の応用により汗出でて治したるの後突如として胃中和せず云々の病症を発したる如くなれども實は然らず此の症は従前より存在したる者なれども傷寒の為め一時隠蔽せられしものなれば其の治するや否や直に現出せしなり而して胃中和せずとは胃内が平時の如く調和せざるの意にして乾噫食臭とは傷寒雑病辨證に(略す)…と云へるが如く消化不良に呑酸そう囃を兼ぬるの義にして脇下水気ありとは胃内停水ありとの謂なり以て本方の胃の弛緩拡張及び多酸症に用ゆる所以を知るべく又雷鳴下痢する者云へるによりて急性胃腸カタルに応用の機会あるを知るべし。

諸家知見

方極
半麦瀉心湯証にして嘔する者を治す。

方機
若し乾噫し、食臭し、腹中雷鳴し、下利し或は嘔吐する者は生姜瀉心湯之を主る。

方極附言
半夏瀉心湯証にして、乾噫食臭、下利の者を治す。

医聖方格
病人、心下痞し、食臭を噫し、重き者は嘔吐し、脇下に水気有り、腹中雷鳴し、下利する者は、生姜瀉心湯之を主る。 

施氏續易簡方
大病差え脾胃尚弱く穀気未だ復せざるに強食過多なれば停積化せず心下痞鞭、食臭を乾噫し脇下水あり腹中雷鳴、下痢、発熱するを治す食復と名く最も之を服するに宜し。

類聚方廣義
凡そ噫気乾嘔を患い或はそう囃呑酸し或は平日飲食する毎に悪心妨悶を覚え脇下に水飲升降する者は其の人多くは心下痞鞭し或は臍上に塊あり此の方を長服し五椎より十一椎に至るまで及び章門に灸すること日に数百壯、消塊丸、硝石大圓を兼用すれば効あり。

二神傳
卒癇乾嘔するを治す

萩野家口訣
○鼓脹、心下より段々脹てくるは實なり生姜瀉心湯、大半夏湯(中略)血脹は小腹より脹るものなり先ず生姜瀉心湯を用ゆれば其の塊、徐々に減ずるものなり長く用いざれば益なし是れ血塊あれば必ず水を留め凝結して其の塊大となるものなり水をとくとさばいて而して血脹の一方を投ずれば効を奏すること速なり。
(湯本 余の経験によれば心下より段々脹てくるは大柴胡加厚朴湯、小腹より脹るものには大黄牡丹皮湯を要すること反て多し。) 
○溜飲、一通りの溜飲にて痞鞭する者は生姜瀉心湯之を主る。 
○そう囃、水に火を持たんとする者あり治方は三瀉、生姜瀉心湯の類なり共に痞なくては用い難し。
(湯本曰く是れ呑酸?囃は停水に炎症を兼ぬるによるとの意なり。) 
○産後下痢する者は今まで屈したる腸一時に伸び水流れあるく故に下痢するなり生瀉を與えて腸中の水を逐うなり。 
○産後咳嗽多くは水肺を浸すの為す所なり治方同前。
(湯本曰く右二症は必ずしも本方の主治にあらず実験によれば小柴胡湯当帰芍薬散合方證反て多し。) 
○帶下、 

方伎雑誌 
癖嚢或は吐水病と稱し腐敗水或は食物をも交え吐すものあり多くは胸中?囃、心胸痞塞、脇腹攣急、?結ありて肩背凝り痛むもあり日々或は隔日、四五日には必ず痛を発し苦酸水或は無味の水を吐するもあり吐する前、噫気悪心のみにて痛まぬ者もあり大抵大便秘結する人多し主方は生姜瀉心湯或は附子硬米湯に芍薬甘草湯或は大建中湯等を合し兼用には消塊丸、大陥胸丸一銭を毎夜或は一二夜を隔て用ゆれば三四ケ月にて全治するなり吐水後渇して堪え兼ぬる人あり是れには茯苓澤瀉湯を多服せしむべし十日も飲食を慎むうちには痛みも吐きも止むなり其のうちには腹中粘着の宿毒も取れ拘攣も?塊も和ぐなり(中略す)酒、硬飯、蕎麦麺、餅、葛餅、酢、鮨、油者、湯茶、塩物、干物の類を禁ず。禁を守らぬ人を療治するは無益なり。

矢数道明
半夏瀉心湯証で、噫気、食臭を発し、腹中雷鳴、下痢する者。

小倉重成
軽度の心下痞、そう囃、呑酸、噫気、乾嘔、嘔吐、腹中雷鳴、胃部拍水音。三瀉心湯の中ではそう囃が主証。

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