諸家知見
【芍薬甘草湯】
腹證
既に述べしが如く芍薬及び甘草は其の腹證として直腹筋の攣急を現すものなれば此の腹證を認めて本方を處すときは独り下肢のみならず上肢の攣急及びその他一般臓器組織の緊縮急劇なるに因りて発する諸症を主治す是れ東洞翁が本方に拘攣急迫する者を治すと定義せし所以なり。
方極
拘攣し急迫する者を治す。
方機
脚攣急する者(応鐘紫円)。
類聚方廣義
腹中攣急して痛む者を治す、小児夜啼止まず腹中攣急甚しき者亦奇効あり。
医學心悟
腹痛を止むること神の如し。脈遅なるは寒と為す。乾姜を加ふ。脈洪なるは熱と為す、黄連を加ふ。
朱氏集験方
脚弱力なく行歩艱難なるを治す。
内科摘要
小腸府咳を発し失気(放屁)するを治す。
聖剤発蘊(漢方入門講座より)
大腹より臍傍に至りて拘攣あり。それを按せば腰脚或は手足に引つる者なり。足攣急して伸びざる者に用て屡効あり。大剤となして用べし。大に効を得ることあり。又舌強り、噤して腫満し、口を塞ぐ。是を木舌と謂ふ。此湯を作りて熱に乗じ之を漱飲す。妙なり。又産後痿躄を病む者は、椅に在る内より両脚しびれて後には覚束なく痿して起つこと能はず。(中略)此方の証多し。此方意を考ふるに是小建中湯の由て来る者なり。
老医口訣
芍薬甘草湯、古今医統神効散と名づけ消渇を治す。
劉河間は下痢腹痛或は後重身熱久しく愈へず脈洪数者及び膿血粘稠の者を治す。此方拘攣急迫なるものを治す故に拘急して痛む諸症を治するに小建中湯に代用して其効捷かなり。又脚気にて屈伸し難く両足或は膝頭痛者を治す。又草烏頭を加へて妙に虫積の痛みを治す。又湿毒にて諸薬を服して後気力弱く骨節仍ほ痛みて攻下如何ともし難き者に松節を加へ多服せしめて愈ゆ。証によりて虎脛骨を加へて消息す。老医の伝に淋甚だしく昼夜号泣する者加松心効あり。
勿誤薬室方函口訣
この方は脚攣急を治するが主なれども、諸家腹痛及び脚気両足、或は膝頭痛んで屈伸すべからざる者、其他諸急痛に運用す。また釣藤・羚羊を加えて、驚癇の勁急(激しい痙攣)を治す。又梅毒諸薬を服して羸劣骨節なほ痛み、攻下すべからざる者、松心を加えて効あり。或は虎脛骨を加ふるも佳なりと云ふ。
古方便覧
脚攣急甚しきものを治す。
小倉重成
両腹直筋の異常緊張、横紋平滑筋の異常緊張及び疼痛、四肢のひきつれ。本方は全く無汗。
藤平健
万人向きの鎮痛剤。諸種の神経痛、結石のための疼痛発作、下肢が屈曲し伸びなくなる時に効く。疼痛が激しい場合程効く。
【芍薬甘草附子湯】
方極
芍薬甘草湯証にして悪寒する者を治す。
方機
汗の後悪寒する者。
脚攣急し疼痛する者(応鐘、紫円或は賓)。
腹證
本方は芍薬甘草湯に附子を加えし者なれば芍薬甘草湯の腹證に加うるに附子の證あるものが即ち本方の腹證なり東洞翁が本方に芍薬甘草湯にして悪寒する者を治すと定義したるは芍薬甘草湯と此の師論とを参酌したるものなれば理なきにあらざれども悪寒の二字は只附子の外證のみを代表し脈腹二證を意味せざれば以て定説と為し難し。
聖剤発蘊
芍薬甘草湯の腹状にして臍下任脈の通りぐさりと濡にして手指の陥没するあり。又はさまでになく唯少し濡なるものあり。此腹状ゆへ支節微痛及び悪寒の証を呈するなり。無言にて腹診し、病者に問て相違なき者なり。
類聚方廣義
痼毒沈滞し四肢攣急屈伸し難く或は骨節疼痛、寒冷羣(ぐん)痺する者を治す(七實・十幹)。 此の方に大黄を加えて芍薬甘草附子大黄湯と名け寒疝、腹中拘急し悪寒甚しく、腰脚攣痛、睾丸腫れ、二便不利する者を治す奇効あり。
勿誤薬室方凾口訣
此の方は発汗後の悪寒を治するのみならず芍薬甘草湯の症にして陰位に属する者を治す。又附子を草烏頭に代て妙に蟲積の痛を治す、又疝或は痛風、鶴膝風等に活用す、痛風より鶴膝だちになり綿にて足を包むと云う程冷るに効あり凡そ下部の冷、専ら腰にかかるは苓姜朮甘なり専ら脚にかかるは此の方なり又濕毒の後ち足大に冷る者にも用ゆ若し餘毒あるものには伯州散を兼用すべし。
張氏醫通
瘡家、汗を発して痙を成すを治す。
医聖方格
陰病、悪寒して攣急する者は、芍薬甘草附子湯之を主る。
小倉重成
芍薬甘草湯証で攣急疼痛と寒冷が強い。
芍薬甘草附子大黄湯
寒疝、腹中拘急し悪寒甚しく、腰脚攣痛、睾丸腫れ、二便不利する者を治す奇効あり。
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