酸棗仁湯(さんそうにんとう)

傷寒論・金匱要略条文

【金匱要略】
虚勞、虚煩眠るを得ざるは、酸棗仁湯之を主る。

諸家知見

湯本
冒頭に虚勞と稱するが如く本方證ある病者は一見貧血虚弱の状貌あるものにして虚煩眠るを得ざるは梔子し湯證に類すれども彼に於けるが如き熱及び舌苔なく腹證亦彼に似たるも方中茯苓あるを以て心尖心下に虚悸ありて神経症状に富み復た彼に於けるが如き充血及び炎症機転なし是れ二者の別なり。)

方極
煩躁して眠るを得ざる者を治す。

方機
煩して眠ることを得ざる者。
煩悸して眠く寤めざる者。

類聚方廣義 
○諸病久々愈えず?羸困憊、身熱盗汗、口乾喘嗽し大便?く小便渋り飲啖味いなき者は此の方に宜し證に随いて黄耆、麦門冬、乾姜、附子等を加う。 
○健忘、驚悸、??(セイチュウ)の三症は此の方に宜しき者あり證に随いて黄連、辰砂を加う。(湯本曰く此等の症に本方證多きは余も経験せる所なれども辰砂を加うるの要なし。)
○脱血過多、心神恍惚として眩暈寐ねず煩熱、盗汗、浮腫を現す者は此の方に当帰芍薬散を合するに宜し。 
 (湯本曰く本方證ある病者中往々眩暈を以て主訴となす者あり注意すべし、尾台氏は煩熱と稱するも高熱あるにあらざれば誤解すべからず。) 
○東洞先生、一病人昏々として醒めず死状の如く五六日に及ぶ者を治するに此の方を用いて速に効あり圓機活法と謂うべし。  

勿誤薬室方凾口訣 
此の方は心気を和潤して安眠せしむるの策なり同じ眠るを得ざるに三策あり若し心下肝膽の部に當りて停飲あり之れが為に動悸して眠るを得ざるは温膽湯の症なり。
 (湯本曰く之れ温膽湯の症にあらずして大小柴胡、柴胡桂枝乾姜湯の證なり。)
若し胃中虚し客気膈を動して眠るを得ざる者は甘草瀉心湯の症なり。 
 (湯本曰く特り甘草瀉心湯證のみならず梔子湯等の證稀ならず。) 
若し血気虚燥心火亢ぶりて眠るを得ざる者は此の方の主なり済生の帰脾湯は此の方に胚胎するなり又千金酸棗仁湯に石膏を伍する者は此方の證にして餘熱ある者に用ゆべし。
(湯本曰く不眠の原因極て多端なり豫め方剤を擬すべからず。)

類聚方集覧
昼夜昏睡し、数日覚めざる者も、亦間ま此の方に宜しき者有り。

矢数道明
虚労病で虚煩眠るを得ずが目標。体力が衰え、元気なく、腹も脈も虚状を呈し、胸中が苦しく煩えて眠ることが出来ないか、かえって嗜眠のこともある。

小倉重成
脱力衰憊状態で心中煩悶苦悶による不眠、貧血、神経過敏で熱性症状を欠く。

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