桂枝甘草湯(けいしかんぞうとう)

傷寒論・金匱要略条文

【太陽病中篇】
汗を発すること過多、其人手を叉し自ら心を冐へども、心下悸して按を得んと欲する者、桂枝甘草湯之を主る。

【傷寒論】
未だ脈を持たざる時、病人手叉して自ら心を冐う、師因て教えて、試に咳せしむ、而も咳せざる者は、此れ必ず両耳聾して聞くこと無きなり、然る所以の者は、重ねて汗を発するを以て虚す、故に此の如し。


諸家知見

方極
上衝急迫する者を治す。

方極直解
頓服して一時の急を救う方なり。

方極國字解
ひたすら逆上し、腹にぴくつくものありて心下えつき上り、胸の中もちぐるしく、急迫なる者に用ふ。

腹證
本方證は発汗過多の因により軆液を亡失し虚證に變ぜしものなれば腹部は一般に軟弱無力なれども未だ陰證に陥らざるが故に熱状ありて寒状なく且つ上衝急迫して心悸亢進劇なるものなれば脈は疾促にして心臓及び心下部に悸動現れ腹部大動脈の搏動亦甚し、而して之を桂枝去芍薬湯證の脈促胸満に比すれば上衝急迫一層高度なるものなれども此の心悸亢進は實証に於けるものと異り血圧昇騰を伴はざるを常とす。

湯本
本方自家は實用せらるること稀なれども之より變化せし要方たる苓桂朮甘湯、桃核承気湯等の方意を解するに甚だ緊要なり。

聖剤発蘊
是れ卒暴の記なり。小児に多し。にわかに物音におぢ驚怯?溺する者なり。此病人劇しき時はころころところげて苦しむ者なり。大人も亦此處にて考へ用べし。上衝急迫の文にて劇しき姿見ゆるなり。此方は何れも劇証と心得べし。鳩尾にて上衝の気を診するに、打こみの劇しきは茯苓の悸に紛れるほどのことあり。是故に本論にも其人手を叉て自ら心を冒し心下悸し按を得んと欲する者と説て鳩尾にせまり苦むの状明白なり。

医聖方格
其の劇しき者は呼吸逼迫、短気して平臥すること能はず、頭汗流漓す。或は小便難なり。

腹舌診候
舌色大抵常の如く、或は微しく白苔あり。腹濡にして其の発作するや、湯の沸々たるに同じ。点々指頭に応ず。其の休むに方って自ら大息す。其の時水声下る者あり。

藤田謙蔵
或は脱汗に因りて勢力を失い、その為に気逆を起して心悸亢進を現す者、或は上気し、心下部力なく、呼吸促迫の状ある者、或はヒステリー、或はバセドー氏病の類で、特に多汗心悸亢進を主とする者等、其他の類症に応用する。

腹診配剤録
胸さわぎして心下おどり、右の胸さわぎしてじゅつなく、心もあしき故、病人按腹を欲するなり。

小倉重成
発作性心悸元進、のぼせ、胸内苦悶。

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