片手落ちー抗生物質

 私も学生時代、抗生物質教室に籍を置いていましたので抗生物質の有効性は十分認めますが、ただ残念なことは、感染症の治療において、西洋医学は、非常に片手落ちであるように思えます。感染する細菌がいれば感染される人間がいるわけで、感染症の治療において、ただ、細菌の方にのみ目を向けて、感染された人間のほうにはあまり目が注がれていません。細菌が体内に侵入すると必ず感染症を引き起こすということがいかに盲信であるかを、自分でコレラ菌を飲んで身をもって立証した、ぺッテンコーフェル氏の例もあるように、感染される人間が全くの健康体であるならば、発病はありえないのです。しかし、そういう全くの健康人はそういるわけもなく、私たち凡人はすぐに感染してしまうのですが、たとえ感染したとしてもその後の病気の経過は、細菌と人間との力関係によって、推移するわけです。病気の主体はあくまで人間なのです。そして、その観点から漢方を見てみますと、漢方薬方による感染治療は、主体である人体の機能の改善修復を第一義とし、その上、殺菌作用のみでなく、細菌毒素の排毒作用も兼ね備えています。
 近年、みなさんもご存知のように、ほとんどすべての抗生物質に耐性を示す黄色ぶどう球菌(MRSA:メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)が、ときどきテレビを賑あわせていますし、また多剤耐性を示す結核菌なども問題になってきてテレビでときどき話題にのぼります。さらには、菌交代現象による緑膿菌感染や、日和見感染等による院内感染も大きな医療問題になってきています。これらは皆、細菌のみに目を向けた、抗生物質の使いすぎによる結果の現われだと私は愚考するのですが皆さんはどのようにお考えでしょうか。
 感染症に対する漢方薬方の有効性は、風邪などはいうにおよばず、私自身の帯状疱疹の治療体験、「症例:局部と全体」をみてもわかりますように、感染された人間自身の体を調整修復し抵抗力をつけることにより、全く痛まれもしないで、治ってしまうのです。
 感染症といえども、主体はあくまで人間であるということを忘れてはならないと思います。
「外因は内因により発病する」と言う言葉の重さを十分吟味する必要があります。

この「漢方の特質」は漢方の本質を知っていただくための水先案内です。
本質につきましては「医界の爆弾」「皇漢医学」をご覧ください。