病気の本質ー体質

私たち個々の体質は、生まれながらにして両親からうけ継いだ体質に加えて、生活環境や生活習慣、食生活などによって、固有のものとなります。その固有の体質が通常の健康状態から、限度を超えて、大きくずれ込んできたとき、いろいろな症状が出るようになりますが、その限度を超えた時期が病気です。

 
漢方ではたとえ病名が違っていても同じ体質なら、同じ薬方で病気は治ります。
 たとえば、小青竜湯体質の人は、体表部においては、汗腺機能の過緊張の状態にあり、皮膚からの蒸散作用が十分行われず、また裏に寒があり、そのため水分代謝が悪くて、心下部に水の偏在があります。それが風邪などの誘因によって触発され、さらにすすんで浮腫となり、これが腎臓に負担をかけると腎炎となり、また体表に溢れ出ると鼻炎になりますし、肺に影響を及ぼして喘息をを呈することもあります(「症例:ステロイド剤」参照)、また、その生理的非活性の水が関節に流注して関節炎症状を引き起こしたり(「症例:病名不明」参照)もする訳です。これらの腎炎や鼻炎、喘息、関節炎はみな小青竜湯でよくなります。
 また、切らねば治らないといわれた、「症例:急がば回れ」のバセドー氏病の人や、「症例:麻痺と過敏」の人の産後の浮腫も、どちらも過労から生じたものですので、どちらも疲労病を治す、炙甘草湯でよくなりました。バセドー氏病と産後の浮腫が同じ薬方で治るなどということは、病名治療を主とする現代医学ではとうてい考えられないことです。「症例:同根多災」や、「症例:一石二鳥」もこの例にもれません。

 
また、漢方では同じ病名でも体質が異っていたら異う薬方で病気を治します。
 たとえば、同じ喘息でも、その病人の体質が、どの病位にあるかによってその薬方はまったく異なってきます。同じ喘息でも「症例:同名異病」の太陽病位の虚証にあって桂枝加厚朴杏仁湯で治った人と少陽病位の虚証にあって柴胡桂枝乾姜湯で治った人の違いをみても明らかです。
 また、同じリウマチでも、「症例:瞑眩」の人のリウマチと、「症例:余儀なく転職」の人のリウマチは、ともに病位は同じ太陽病位に属しますが、この2人には虚実の違いがあります。前の人には発汗傾向がみられますので体質的に虚証ですし、後の人は余り汗をかきませんので実証で、それに加えて血証がありました。このように、その体質の違いによりその薬方はまったく異なってきます。これほど重要な体質を西洋医学はなぜ無視するのでしょうか、不思議でなりません。

 
同じ人でも体質が変わり、用いる薬方も異ってくるときがあります。
 「起生転血」の症例を見てください。同じ人の不妊症で、第一子のときは、体質は少陽病位の実証で、桂枝茯苓丸で無事妊娠し、第二子のときは、厥陰病位の当帰四逆加呉茱萸生姜湯で無事妊娠することができました。同じ人のおなじ病気でもそのときの体質により適応する薬方は異なってきます。

 以上のことからみても病気の本質はその体質に由来するということは明らかです。
このように漢方治療においては、個々の体質を病気の中心にすえ、その病気を引き起こしている体質に正面から向き合って、その体質を総合的に改善し、修復することを第一義とします。この点において、漢方療法は真の原因療法ということができると思います。
 最近、生活習慣病なる言葉も聞かれるようになってきましたが、現代医学でも、すこしは、体質の重要性に気づいてきたのではないでしょうか。


この「漢方の特質」は漢方の本質を知っていただくための水先案内です。
本質につきましては「医界の爆弾」「皇漢医学」をご覧ください。