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大瀬戸から少し登った開拓村からやってきた60歳代のご婦人、店に入ってきて相談机の前に立ったきり座ろうとしません。「どうぞお座り下さい」と椅子をすすめますと、「実は十数年前子宮筋腫の手術をして、その後なんともなかったのですが、3年程前より、1日数回、下から手を入れて子宮をまぜくりかえされるような感じがして困っている。入院して精密検査をし、どこも悪くはないと言われながらも、治療を受けていたのですが、一向によくならず、最近ではどこの病院にいっても真剣に相手にされません。それで、お宅のことを聞いて相談にきたのですが、座ると下から内臓が出てしまいそうな感じがしますので」と、立ったままで話すのです。
いろいろ尋ねてみたのですが、腑に落ちない内容をくり返すばかりで、これといって証らしきものはつかめません。ただ、のどの異物感があります。
私はこれに加味逍遥散(かみしょうようさん)を与えてみました。3ヶ月ほどするとかなり改善し、イスにも座れるようになり、夜間も眠れるようになりましたが、下腹部の異常感覚は軽くはなりましたがまだ完全には除かれません。そこで、屋に屋を重ねるきらいもないではありませんが、加味逍遥散と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を一緒に飲むようにさせました。
これを5ヶ月ほど飲んで、8ヶ月ほど経ったある日、電話があり、「お陰様で友達と旅行に行くことができました。有り難うございました」ということで廃薬となりました。
病院で何ともないといわれながら、それでも治りたい一心で、治療を受けている人がかなりいます。見た目になんともなくとも、苦痛があればそれは病気です。見た目(検査結果)と病気とは本質的に違うもので、漢方では、人間の体の中を「気」というものが流れており、その気の作用によって人間の体は正常に機能していると考えられています。則ち、「気」は「働き」であり「機能」であり、その気を病むのが病気であって、気は目には見得ないもので、気の異常は、現代の医学では、幾ら検査をしても検査結果には現れません。検査結果に現れるものは病気によって二次的に生じた産物で、非常に局部的なものなのです。病気の真の本体ではないのです。検査で異常が見つからないからといって本気に相手にしないのは、大きな誤りといえます。漢方では心身一如の立場にたち、心が及ぼす身体の機能への影響もを大事に考えています。
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