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昼過ぎのことです。M婦人から突然の電話、「どうしたのですか」と尋ねますと、「実は主人が会社で急に腹痛に襲われ、病院にいって急性腸炎と診断され、早退して、病院の薬を飲んで寝ているのですが、痛みがとれず、ウンウンうなっています。なにかよい薬はありませんか」というのです。
「熱は?」と尋ねますとと38度前後、「下痢は?」と尋ねてみますと、案の定、しぶりばらです。吐き気はありません。すぐに薬を取りに来るように告げ、まもなくしてみえた婦人に、ひどいようなら1日で飲んでしまってかまいませんからと、3日分の黄 湯(おうごんとう)を差し上げました。
それから1時間ほどして、また、M婦人からの電話です。「どうしました」とききますと、「実は、さっそく薬を煎じて飲ませたところ、10分ほどすると潮が引くように痛みがおさまり、あまりの効き目に、麻薬でも入っているのではないか聞いてみろと主人にいわれました」といいます。
「大丈夫ですよ、実は私の2人の息子がまだ幼い頃、同時に急性腸炎になり、涙を流して痛がっていたときにも実によく効きました」と答えるとやっと安心してくれました。
黄 湯はしぶりばらを伴う急性腸炎のような腹痛に実によく効きます。激しい腹痛のため、すぐ病院に駆け込むためか、そう用いる機会はありませんが、その切れ味はするどく、まさに名刀正宗の切れ味というべきでしょう。はげしく痛んで苦しんでいる時には地獄に仏です。
湯本求真翁は小柴胡湯の芍薬を増量して黄 湯証に対応したとのべています。
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