一石二鳥

 30代後半のやせ型で色の浅黒い筋骨質の左官さん、「半年ほど前から胃潰瘍で病院通いをしているが治療をするとよくなるが、やめるとまたすぐに再発し、これの繰り返して困っていた。近所に仕事にきたが漢方薬局が目に付いたので根治したいと思い相談に寄った」というのです。

 症状は時に起こる胃部の疼痛と軽い胸やけ程度でとりたてていうほどのものはありません。

そこで
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)茴香、牡蛎を別包としてさしあげました。これを飲みはじめて1ヶ月たった頃、再来して、「胃潰瘍の方の痛みも起こらなくなったが、持病の痛風の方もよくなり、仕事のとき悩まされずにすむようになった」と喜んで報告してくれました(私には痛風の持病があることは告げていなかった)。さらに1ヶ月飲んで廃薬となりました。

 また、別の相談者ですが、父親が相談にみえました。高校生の息子に喘息があり、大体発作は1ヶ月に1度程度の割合で起こり、今度の発作は雨にぬれて帰宅したのが原因で、軽い微熱があり、喘鳴と激しい咳嗽、呼吸困難があるので何とか治して欲しいというのです。。職場の人に紹介されて相談に来た様子です。

 本人が見えないので、全く闇夜の鉄砲でしたが、闇の中に目を凝らし、父親の体格と息子さんの症状から的の位置を考えて、
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)麦門冬湯(ばくもんどうとう)を同時に飲むようにすすめてみました。

 1ヶ月後に再来していうには薬を飲みはじめて1週間ほどで発作はおさまり、同時にアトピー性皮膚炎の方も改善したといいます。さらに1ヶ月服用して廃薬しました。

 あまりに早く服薬をやめてしまったので、その後も時々気になっていたのですが、それから5年ほど経って、紹介してくれた方に会う機会に恵まれ、その後の様子を尋ねて見ますと喘息の方も、アトピーの方も再発していないで喜んでいますとのことでした。柴胡桂枝乾姜湯と麦門冬湯で治ったアトピーの人は数人いますが、こんなに短期間で効のあった例は初めてです。

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 漢方ではこういう例は非常に多くみられます。その人のもっている病的体質が改善されると、全く無関係に見える胃潰瘍通風が同時によくなったり、喘息アトピーが同時によくなったりします。これは漢方をやっていれば誰もが経験することで、病の根源は、局部的な胃潰瘍でも痛風でもなく、その人固有の病的体質にあるということを意味しています。そして、体のゆがみを全体的にとらえ、根源から治す整体的治術である漢方の真骨頂はまさにここにある、ということができます。局部的治療に偏している西洋医学では決してこうはいきません。


「症例から見た漢方」は「漢方のものさし」「病気の本質」と読み合わせていただけば、よくご理解いただけます。