「心気不足、吐血衂血、此湯之を主る。」
按ずるに此方本と伊伊三黄湯と云ひ、又は倉公火濟湯と名づくと云へども倶に書なければ云ひ伝えたる迄也。傷寒論に大黄黄連二味にて大黄黄連瀉心湯と云ふ、此方心気不足とあり方名は瀉心湯とありて論と方と相違のように見ゆる、千金方に心気不定とあり此れは足と定と文字誤りたるかと云へども不定と云ふてもとくとすまぬなり。先づ此方は丹渓云へるごとく其の人少陰心経不足によって心陽甚だ盛んにして陰血妄行して血上衝に出るものなり。故に大黄亢る所の甚だしき火を下しごん連を以て心肺の火を救う時は心肺の火退き陰血自ら其の本(木?)に復して平和ならしむるもの也。故に心気不足吐血衂血を治するも主剤となすべし。尤も此の時生地黄を加へて甚だよしとす。 又此湯一切の血症は勿論其の餘男子婦人三焦の積熱上焦盛んにして心に攻め衝き、狂癇をなし、或は眼目赤腫し頭頸腫痛し、或は口舌瘡を生じ甚しき者は積気心に衝き上がり煩躁して安からず、飲食進まず、小便赤く渋り、大便秘結し、五臓倶に熱し、或は痔疾下血の肛門腫痛するもの悉く此方を用ひて主とすべし。 又傷寒論、大黄黄連の二味を以て瀉心湯と名付て心下の痞を瀉するの主剤として心下之を按すにナンと云ふ、醫宗金鑑に不ナンと不の字を入れたるもの亦鑿説と云ふべし。若し痞満硬實と云ふ時は承気湯を用揺る也。此の痞と云ふは邪熱心下に聚りて痞結するものなり、故に傷寒論に大に下して後復其の汗を発し心下痞し悪寒する者を表未だ解せざる也、攻むべからず、先づ當に表を解す、乃ち痞を攻むべしとあるを見るべし、大に下して後汗を発し誤治に因て心下の痞すると云ふは邪熱心下に聚りたるものにて濡と云ふべし、不濡と云ふべからず。
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